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〒604-8083 京都市中京区三条通富小路東入中之町23
三条通は、東海道、京、江戸間の帰着地、三条大橋が架かる大路である。
鴨川を西へ渡れば商人宿などの旅籠や老舗商店が軒を並べ、幕末には新撰組や、勤王の志士たちが跋扈したであろう史跡などが、そこかしこに。
年頃は五十の半ば過ぎか。
錆利休の着流しに帯は正倉院柄。雪駄のすり音が少々・・・。
巾着と何やらパンフレットのような小冊子を携えて。
「時候がいいので今日は先ず、燗とあてでも」
ふと、目に留まった看板。
「ほな、ここにしょ」と、吸い寄せられるように暖簾をくぐる。
「すんまへん、よろしおすか」
「はい、いらっしゃいませ」「お一人様ですか」「どうぞこちらのお席へ」と、店の者に促される。
「おおきに、すんまへんなぁ」
男はカウンターに腰をおろし、先ずは、
「お燗をもらえまっひゃろかぁ」
おしぼりで手を拭いながら、燗酒に取りかかる店の者に考えを巡らす。
「見たところ、若い板前さんやな、四十いってるか、う〜ん、三十後半やろか」
この店は燗を錫のチロリで温め、徳利に移し替えて出す。その為、少々時がいる。
暫くしてお燗が出され、徳利と盃を拝見。
「辰砂の発色ええわぁ、アクセントに緑交趾、揃いの盃やなぁ」
一杯注ぐ。
「トック、トック、」
甘い酒の香。味わいは甘ったるくなく、うま味良好。
もう一杯。
ここで付きだしが出される。
黄瀬戸の、のぞきに釜揚げしらす。ポン酢を染ました大根おろしが添えられ、天に盛られた洗い葱が映る。
店内をチラリ、チラリと眺めながら、しばし、付きだしと共に杯を重ねる。
壁には花街の芸舞妓の団扇が飾られ、先ほど見物した芝居が思い出される。
「何、よばれまひょかなぁ」と、男は尋ねる。
「御造りになさいますか、それとも焚いたもんか、焼きもんでもどうです」
「御造りは何がおます」
「明石鯛、鮪、ヤリイカ、そんなとこです」
「ほな、鯛をよばれまひょかぁ」
削ぎ切りされた鯛が数切れ、あしらいと共に鼠志野の向付に盛られ、折敷の上に。
山葵はお醤油に溶かず、鯛の上に乗せ、少しの醤油をつけて、ひと口。
「コリコリ、シコシコ」口福の時。
「おいしい」
お醤油は濃すぎず、甘すぎず、かすかなうま味の香。
「ふう〜」と、ひと息。
店の者の緊張が、ここらで少しほぐれる。
料理人にとって、この、ひと息までが第一関門。
そして、これから、次へのお料理の進め方を思考するのである。
男の食べ終えた向付には草木の絵が描かれており、野趣がある。
伸びやかな線が自然で、笑みがこぼれる。
「もう、ひと品、もらおかな」
「すんまへん。そしたら、焚いたもん、くりゃはりますかぁ」「それと、お銚子をもう一本と」
どうやら、店の物は一人で仕事をしているようで、いそいそと働いている。
コンロの雪平には、ふっくらとした蕪に、青みの葉物が温められ、微かに湯気が上っている。奥では燗酒の湯煎による釜の音が、「ヒュール、ヒュール」
ここで、二本目のお酒が先ず来て、その後、 煮物が登場。
赤絵の器は、ほんわか温かく、気持ちが和らぐ。
蓋を開けると、千切りされた黄柚子の香が立ち上り、それをいっぱいに、堪能する。
蕪に合わせて、水菜も柔らかく焚かれ、薄衣を纏った鴨が、薄色ながら、御出汁とよく絡み、野菜とのバランスもいい。
おつゆも残さず食し、ご飯ものが欲しくなってきたので、
「御寿司はされてますか」「したはるんやったら、なんでもええし、おまかせでなんかぁ、くりゃはるぅ」
店の物は、海苔を一枚ちょっと炙って、手で半分に折り切り、巻きすで鉄火巻きを二本。
備前焼の俎板皿に、切り分けた寿司をのせ、甘酢生姜に粒山椒の佃煮を少々と一緒に出す。
二本目の酒も残り僅かになってきたので、もう一本注文し、寿司をつまむ。
海苔の香り、鮪と山葵、そしてすし飯の絶妙なバランス。
酒が来たので、一杯、進めてみる。
「一杯、どうです。お飲みやすか」
店の者は、ここらで仕事はひと段落したので、お相伴。
旦那は酔いが回り、お腹も落ち着き、二人は語り合う。
男が店を出たのが夜の8時過ぎあたり、日もとっぷりと暮れ街灯が灯る。
このまま帰ろうか、それとも川向こうへでも繰り出そうか、しばし思い、
「あ、そう言えばあの仕込みさん。店だししゃはったはずや」そう思うや否や男の足は東へ。
繁華街での喧騒は今の男には気にならず、川向うまでの足取りもリズミカルに四条大橋に差し掛かる。いつものように河川敷には等間隔に数組の男女たち。その後ろには、みそそぎ川に張り出した 床 の上での宴会客たち。鴨川の流れはいつも通りの雅やかな流れ。
芝居小屋を過ぎるあたりから祇園町の風情が感じられ、芸舞妓の姿も散見される。
花見小路を南に折れ建仁寺さんの方へ。この辺りには石畳がひかれ街の風情にひと役買っている。
路地に入り馴染みのお店に。
友人に連れられ訪れたお店は、お茶屋のおかあさんのご子息がマスターで、カウンターに立たれている。
「ご無沙汰です。お世話になります。」と男。
「おおきに。ありがとうございます。今日は、どちらかからのお帰りですか。」
「ええ」
一言二言かわし終えた後、お酒を注文。
食事のあと少し歩いたので喉が渇き、ジントニックをオーダー。
のど越しで飲みたくもあり、さっぱりもしたいときには決まってこれと決めている。
会話をしながらの、マスターがお酒をつくる所作もとても気持ち良い。
グラスの半分ほど飲んだところに、件の舞子が顔を見せる。
「お店だし、おめでとうさん」と男
「おおきに、おとうさん」「どうぞごゆっくり」
「そしたらお兄ちゃん、行ってまいります」
マスターに挨拶をして、お座敷へと出かける舞子。
久方ぶりに会った仕込みさん、すっかり別嬪さんに。
「無事 お店だし、しゃはってよかったなぁ」
「いっぱい お花 がつきますように」
マスターにお声がけしておかわりのお酒。
二杯目はスコッチをオンザロックで。
最近はウイスキーに人気が出ており価格も高騰しているが、男は特にこだわりはない。
そして葉巻を一服。煙草はのまないのだが、たまに葉巻は嗜む。
そうこうして、祇園の夜は更けてゆく。
副理事長 柳家 柳澤伸夫
おつきあい
朝、玄関を出れば、お向かいさんやお隣さん、ご近所の皆さんと出会います。
そして、目と目が合えば「おはようございます。」や「おはようさんです。」と、ご挨拶。
先様がお気づきになられていないようでしたら、軽く会釈か、大きくはっきりとした声で再度、挨拶。(これができる人は実直明朗な方)(大抵は、気が付いてもらえないと、そのままにしてしまいがちです・・・。)
我々、飲食店を営んでいたり勤めていたりする場合、市場へ買い出しに行けば、仕入先、同業者さんたちと朝のご挨拶をいたします。そしてお店へ戻れば家族、同僚、従業員さんとの挨拶があり、今日一日の仕事が始まります。大方のお店ではこのような感じのスタートでしょう。これは諸先輩たちの時代もそう違いはなかったものと思われます。今日、色々変化が多く、ついてゆけない事もありますが、「「挨拶」」は昔から変わらない習慣の一つでしょう。(ここでは習慣と言わせていただきます。)(たまに挨拶するのが苦手なお人もおられますが、温かく見守りましょう。)
この様に、ご挨拶を始めとして人と人とのつながり、「「おつきあい」」は、始まります。
この「「おつきあい」」ですが、いろいろなおつきあいがありますね。小さな(少人数)ものから大きな(多人数)ものまで・・・。そう、向こう三軒両隣、町内会、自治会、何とかクラブ、なんとか組合、なんとか会議etc・・・。
現在でも会員諸氏がご活躍され盛況な会もあれば、会員の減少で運営を四苦八苦されて円滑に進行しづらく課題山積な会もあります。発会当初はそんな危惧は思いもよらなかったでしょう。10年ひと昔。多様に変化し続ける現代では、相互扶助をモットーとする事が難しい時代ですよね!
「他人の不幸は蜜の味。」「隣の芝生は青く見える。」「同業者といえ、皆ライバル。」「会とは利用するもの。」「我々の会は特別な会。」と思いがちですが、せっかくお近づきになれたのですし、仲良く、おつきあいしようじゃありませんか。危ない橋を渡るものあれば注意し、又、互いの成功の喜びを分かち合い、一緒になって遊んだりして・・・。
なが〜〜〜〜〜い、おつきあい(何とか銀行の宣伝みたいですが)して、皆で楽しく。
そして、そのつながりが横につながり、ななめでもかまいません。つながり、つながって行くと、HAPPYな生活が送れると思うのですが。(HAPPYなんて安直ですみません)
ちょっとしたお声がけ。そんな些細な事から交流が生まれ、「「おつきあい」」が始まり、なんとか会への理解が得られれば、皆さん(非会員)の参加の希望が持てるのではないでしょうか。
おつきあいするのは時間と労力を使い、大変なこともあり、悲観的に思われることもありますが、それ以上に人生においての調味料になるものと・・・。
これからおつきあいを始めようかと少しでも思われます方々にお伝えしたく存じます。
京都府ふぐ組合 副理事長 柳沢 伸夫
みなさんは外食する際、お箸について注目されたことはありますか?
定食屋さんに、ラーメン店、老舗の懐石料理店やお寿司屋さん、そしてふぐ料理店・・・
其の他にも沢山のお料理屋さんがありますが、一部のお店を除き、たいていお食事される際にはお箸を使いますよね!
最近では、マイ箸持参のお客様もおられ、環境に関心のある方々も増えてきました。
私は長年料理店の商いをしておりますので、当たり前のように感じておりましたが、割り箸の生産について、思い違いをされておられる方々がおられますので、失礼ながら筆をとらせていただきました。
昨今、テレビなどで割り箸生産における環境破壊が取り上げられる番組もあり、
環境問題に敏感な方々は問題視されておられることと思います。
それらは割り箸生産の為に、自然林を伐採して原木一本まるごと割り箸用に加工され、
物によっては化学薬品を使用して製品に仕上げます。
竹を使用した割り箸も同様に薬品処理される製品も多く、健康を害する恐れが懸念されます。
では何故、そのようにしてまで、環境を破壊したり、薬品漬けの割り箸が製品化されるのでしょうか?
それは価格です。
手つかずの原生林、原木を伐採加工すれば原価は掛かっていません。(土地の購入や開発に関してはいろいろな利権が絡んでいるでしょうし、お金は動いてはいるのでしょうが・・・)
故に低価格にて飲食店や大手スーパー、コンビニ、チェーン店に販売でき、それらは大抵、お箸をお客様に無料で提供されますので、低価格のほうが利益になります。
消費者も割り箸代を払うことに抵抗があるでしょうし、無料であれば納得しているのが現実だと思います。
先日、中国の上海から来られたお客様に、私のお店でお使い頂いている割り箸の事についてお話し申し上げましたところ、驚き、関心されておられました。この事は同様に三十年以上日本にお住まいのイギリス人の友人にも当てはまり、我々が皆さんにお伝えしなくてはならないと思い至った次第です。
京都では長年、奈良県の吉野で生産されている杉材やひのき材の間伐材を使用した割り箸を使用しています。そう、それらは文字どおり、生産されています。
山に苗木を植林し、時期を見て間伐、残した木々を製品にするために沢山の手間と時間をかけ手塩にかけて育てます。
間伐材は用途に分けて利用し、それらすべてに事業が営まれております。すべての分野がうまく回ってこそ山が綺麗に保たれるのです。
一部の分野が顧みられないと山は保たれず、災害時などに災いをもたらすこともあり、そして美しくない山は大変淋しいものです。日本国土はその大部分を山、森林が占めており、それらの環境は日本にとって非常に大切な事であります。
私達飲食を生業とする事業者は、小さなことではありますが、それらの為にも少々価格が違えども林業従事者の生産されている割り箸を利用することで、環境保全、生産者応援の後押し、そして日本の山、森林の保護の一端を担えればと思います。
http://www.town.yoshino.nara.jp/about/sangyo/hashi/
http://www.shokokai.or.jp/29/294441Sp627/index.htm
〒604-8083
京都市中京区三条通富小路東入
中之町23
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FAX.075−221-1327